俺の世界には、君さえいればいい。
言い切ってしまった櫻井くんの腕は、それくらい自信があるものなんだろう。
確かに有名な剣道家の元に生まれて、たまにテレビ取材だってされている。
小学生のときから何度も優勝経験を果たしていると前に教えてくれたり、全国大会は当たり前のことだと。
「でも…先輩とかと戦ったりするんだよね…?」
「そうですね。でも俺、小学生のとき高校生と戦ってたくらいなんで…もう慣れたものっていうか」
「……すごい、」
そんなことをサラッと言えてしまえる人生を1度でいいから経験してみたかった。
そうやって胸を張って言えることがあるのは誰が見てもすごいし、憧れる。
櫻井くんはそれを自慢というものにすることなく、表情を変えずにいつも通りに言ってしまう。
でも、そんな中に見える謙虚さがあって。
鼻につくって言われてしまった私とは反対で、鼻につかないってこういうことなんだろうなぁ…。
「まぁ、厄介な怪我さえしなければ勝てます」
「…お、応援…してます、頑張って櫻井くん」
「…ありがとうございます。……か、」
……か?
櫻井くん、まだ言いかけてる……よね?
「か、…かなの、」
「…!」
「……さん、」