俺の世界には、君さえいればいい。
こてんっと、頭に小石が飛んできたみたいな気持ちだった。
まだ呼び捨ては無理みたいで、敬語も取れないみたいで。
だけどそんな櫻井くんを見ると自然と頬がゆるむ。
「…かなの、さん」
「ふふっ、」
どうしよう……櫻井くんが、かわいい。
すっごくピュアなの……。
私も人のこと言えないかもしれないけれど…櫻井くんを見てると頑張れって言いたくなる。
いつも学校でみんなに見せる顔とは別人にも思える表情ばかりで。
「じゃあ俺、そろそろ行きますね」
「うん、頑張ってね。…か、かずえくん、」
「……!」
ぼそっとつぶやく。
恥ずかしくなってお見送りを素早く済ませると、せっかく立ち上がった櫻井くんがストンッと座り直してしまった。
「…えと、あの、…なんか聞こえづらくて、」
「…え、」
「聞こえづらくて、もう1回…言ってもらわないと…」
「あっ、えっと…頑張ってね、」
「……」
すると沈黙。
なにかを待っている櫻井くんは、じーっと見つめてくる。
「が、頑張って…」
「……」
「がんばって…ください、」
「……」