俺の世界には、君さえいればいい。
そしてとうとう準決勝まで進んだ櫻井くん。
余裕そうな落ち着き様で、試合場で防具をはめた。
「ウォォォオオオオーーー!!!」
「ヤーーーッ!!!ァァァーーー!!」
やっぱり上へ上へと進んでいくと、相手はみんな高校3年生。
櫻井くんは平均的な体格なのに、他の剣道部の人たちに比べると線が細くて。
柔道部とかじゃないの…?と思ってしまうくらい、今度の相手はガタイの良い人だった。
「がんばって櫻井くん…、」
ぎゅっと膝の上でこぶしを作る。
もちろん勝ってほしいけれど、なにより怪我をしないでって心配のほうが大きくて。
さっきも足を踏み外してしまって棄権する選手もいたから…。
さすが準決勝、今までより相手も手強く、なかなか一本が取れない状況だった。
そんなとき───、
詰め寄った片方は何かを仕掛けて、もう片方はぐらっと体勢を崩す。
「えっ、ねぇいま足蹴ったよね…?」
「だよね!?あんなのめちゃめちゃ反則じゃん…!大丈夫かな櫻井くん…」
体勢を崩したほうは櫻井くんだった。
確かに相手が無理やりに詰め寄って、足を“かける”んじゃなく“蹴る”と言ったほうが正しいほど怪しい動きをしていた。