俺の世界には、君さえいればいい。




私がもしちゃんと止めていたら、ちゃんと言っていたら危ない橋を渡らせずに済んだのかもしれない。

まさかアキレス腱断裂の危険があったなんて……。


悪化させる前に気づけたのが、不幸中の幸いだった。



「ご、ごめんなさい…、」


「やっぱり…。なんで止めなかったの…!?」


「そっ、れは…、」



勝って欲しかったとか、格好いい姿を見たかったからとか。

そうお願いされたからとか。


本当はそんなのじゃなかった。


本当は、優勝した先にある彼からの言葉を聞きたかったからだ。

そんな言葉が早く欲しくて、私は櫻井くんの安全より自分の欲を取ってしまったのだ。



「アキレス腱が断裂したら全治までどれくらいかかるか知ってる!?
ひどい場合は最悪歩けなくなってたところだったのよ……!?」


「っ、す…みません、…櫻井くんが大丈夫だって言ってたので、信じたくて、」


「なにも知らない素人のくせに勝手な判断しないで!!!」


「っ…、」



櫻井くんのために、こんなに必死に怒ってくれてる───…。

それはマネージャーとして誰よりも彼の身体のことを心配しているからだ。


それなのに私は……自分を第一に考えて、自分の欲を優先させて。



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