俺の世界には、君さえいればいい。
3年生にとっては最後の試合、やはり櫻井くんの今回の判断には納得していないようだった。
怪我を隠そうとした彼に現実を見せるように厳しい言葉を送っていて。
「…けど、気づいてやれなかった俺も俺だ。悪い櫻井」
「いえ、俺が言わなかったのが悪いんです」
「団体戦は代わりを出す。無理せず治せ」
「…はい」
部長さんはそれだけ言って、顧問の先生と一緒に離れていった。
けれど戻ろうとしなかったのはマネージャーの横山さん。
ずっと静かに考え事をしていて、視線がとうとう移されたと思えば───その先にいたのは私だった。
「あんた、知ってたんじゃないの?」
「先輩、由比さんは関係ないですから」
「関係ある。前も勝手に道場に入れてたじゃない、櫻井」
櫻井くんが庇おうとしても鋭い目は近づいてくる。
逃げるわけにもいかないから、そんな空気感でもないから。
私は震える目を合わせた。
「ねぇ、もうここまできたら隠すほうが無理って分かるでしょ?
下手したら櫻井は一生剣道できなくなってたかもしれないのよ!?」
「っ、」
「先輩!由比さんは───」
「だまって櫻井!!」