ノート
「お前といると、気が楽だよ」
小刻みに動くドットに話しかけてみたが、もちろんそいつはなんの反応もせず、プログラム通りに一日を過ごしている。
そう、気が楽なんだ……
他の命を見守っているだけ、愛でているだけで心は救われて糧になる。知能のある生き物はその辺りに稀有な存在だと思う。ルーティンのような一通りを、他人を通して眺めることが、生きるのに必要だ。
普段から切り離して客観視することが、自分の心を理解することでもあるわけで。
それを、見られた上に「必ず黙っていられない」という態度で主観的に逐一を握られていると思うと、精神活動自体がおかしくなってしまうかもしれない。
4限目はサボった。
というか、うとうとしていたら移動教室のことを忘れていて、チャイムの音で気がついたのだ。
こういうときに、時間だぞと起こしてくれるような交遊関係がない俺は、まぁいいか……と、なげやりなままに画面にうつるペットを見つめた。
お昼寝していた。
俺もしようかな、と思う。高い場所は得意じゃないのだが、屋上くらいの高さはなぜだか嫌いじゃなくて、上へ上へと階段を上っていた。
ぼーっとしてるとき、なっちゃんは、やはり俺が嫌いなのだろうかと考えてみた。
俺は嫌いじゃなかったけど。