ノート
 ノートにも吐けない。
イライラする。こいつが消えますようにと心のなかで祈るくらいしかない。
「俺さ、孤独だったんだわ、昔」
聞いてもない孤独を語り出すのはなぜだ。気持ち悪い。

「きみとは、仲良くなれるんじゃないかなー、なんて」

「俺はなれそうにない」

勝手な親近感を抱くな、とますます腹が立った。
何よりも、この一部始終の態度は、こっちを逆撫でしてるようだった。ねっとりとした口調といい、大声といい、背が低い癖に無理に見下ろそうとする白目を剥いたような目といい――
見下されているような、絶妙に不快な気分になる。

「いつも、きみは、優しい言葉をかけてくれる」

陶酔したような声が、そんな話を始めたので、俺は困惑した。

「はぁ?」
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