ノート
「なんだ。立ち上がれた人って、何も、特別じゃないんだ」
諦めたような、安心したような声音だ。
「私よりも、周りを、見ているってだけ」
「おう……」
前にテレビで見た特集だと、嫌がらせはあったけど他の場所に友達が居たという話は多いらしい。
挫ける前に居場所があることが、彼らが閉じ籠らずにいられた理由だと言われていた。
俺だってそうだった。
案外、『ここしかない』『拠り所は他にない』 という気持ち自体のほうが一番の厄介なものだということを、ノートを奪われて知った。
それほどのものだった。
「そか。そんな人を、私、コネだとか実力があるからだとか言って、呪ってたんだね。
まだ出来るかもしれないことも努力しないで」