跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「それなら、しばらく夕飯の用意は遠慮しておこうか」
「え?」
「そんなに時間を惜しんで仕事をしてるぐらいだ。料理をするのもだが、遅く帰った俺のために温めなおす手間をかけさせるのも心苦しいからな。こんなふうに俺に付き合わせるのは申し訳ない」
いつになく殊勝な物言いの千秋さんに違和感を持ち、眉間にしわを寄せた。俺様な彼が発した今の言葉を、そのまま受け取ってよいのだろうか。
「申し訳、ない?」
結婚して以来、初めて千秋さんに謝罪されたかもしれない。もっとも、鋭い視線は少しも悪びれていなさそうだが。
「ああ。そうすればこんな気の散る場所でなく、愛佳の部屋で心置きなく取り組めるだろ?」
なんとなく素直にうなずけない。
自分から自発的に距離をとるのは、まだなんとか我慢できる。でも逆に彼自身にそう促されると、途端に心が痛みだす。
「そ、そうかも、しれない……けど……」
千秋さんの言葉に、どんどん追い詰められていくような錯覚に襲われて、声が掠れてしまう。
「なんだ、愛佳。さっきまでの強気はどうした」
すっかり勢いをなくした私を、千秋さんはおかしそうに笑った。
「無理はさせたくないが、仕事に専念できるようにしばらくは寝室も別にした方がいいな」
「え?」
「その方が、気を遣わずにすむな」
なぜか満足そうにうなずく千秋さんを、呆然と見つめた。「そうだろ?」と同意を求められても素直に肯定できなくて、顔が引きつる。
「え?」
「そんなに時間を惜しんで仕事をしてるぐらいだ。料理をするのもだが、遅く帰った俺のために温めなおす手間をかけさせるのも心苦しいからな。こんなふうに俺に付き合わせるのは申し訳ない」
いつになく殊勝な物言いの千秋さんに違和感を持ち、眉間にしわを寄せた。俺様な彼が発した今の言葉を、そのまま受け取ってよいのだろうか。
「申し訳、ない?」
結婚して以来、初めて千秋さんに謝罪されたかもしれない。もっとも、鋭い視線は少しも悪びれていなさそうだが。
「ああ。そうすればこんな気の散る場所でなく、愛佳の部屋で心置きなく取り組めるだろ?」
なんとなく素直にうなずけない。
自分から自発的に距離をとるのは、まだなんとか我慢できる。でも逆に彼自身にそう促されると、途端に心が痛みだす。
「そ、そうかも、しれない……けど……」
千秋さんの言葉に、どんどん追い詰められていくような錯覚に襲われて、声が掠れてしまう。
「なんだ、愛佳。さっきまでの強気はどうした」
すっかり勢いをなくした私を、千秋さんはおかしそうに笑った。
「無理はさせたくないが、仕事に専念できるようにしばらくは寝室も別にした方がいいな」
「え?」
「その方が、気を遣わずにすむな」
なぜか満足そうにうなずく千秋さんを、呆然と見つめた。「そうだろ?」と同意を求められても素直に肯定できなくて、顔が引きつる。