跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「あ、あの……」

「なんだ?」

意地悪だけど、言い分をきちんと聞こうとしてくれるのはありがたい。

「け、結婚するってなれば……そ、その、一緒に暮らすんですよね?」

ここまで彼の覚悟を見せられたというのに、私の不安材料はやはり私的なものだ。自分の未熟さが嫌になるが、それでも後からそんなはずじゃなかったと言っても通らないのだと思うと、この場で確かめずにはいられない。

「当たり前だ」

なにを言い出すのかと少々呆れた口調の千秋さんだったが、その直後にまたあの意地悪な笑みを浮かべた。

「急に勢いがなくなったな。結婚するからには一緒に暮らすのが当然だ。夫婦としてな」

「ふ、夫婦として」

となれば、夜の生活ももちろん伴うわけで……。
楽しそうな顔をしてこちらを見てくる千秋さんが、私の言わんとするところを完全にわかっているとは気づかないまま、伏し目がちに続ける。

「い、一緒に暮らす、だけ……?」

「さあ、どうかな?」 

意味深な返しに、どういう意味かと顔を上げてしまう。

「動物には発情期があるしな。じゃじゃ馬にだって……」

そう言って、大人の色気纏った流し目を送られて、「ひえっ」と首をすくめた。

「や、やっぱり、そういう……」

だめだ。決定的な言葉を口にするにはあまりにも気恥ずかしすぎて、私には無理だ。ここでそういう経験がないと申告をすべきだろうかと考えて赤面する。


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