跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「け、結婚ですよ。わかってます!?」

もしかしてこれは、高貴な人のちょっとしたお遊びかもしれないと考えたが、彼はいたって真剣な顔をしている。

「なにを今さら。愛佳以上に、理解も覚悟もしているつもりだが」

その重々しい言葉にハッとして、前のめりになっていた身を引く。
どうやら、私の方が思い違いをしていたようだ。

加藤の内情を掴んでこの場に臨んだ千秋さんは、本人の言うように諸々の覚悟を決めているのだろう。縁談を受けるにしろ断るにしろ、自身の下す決断が及川不動産にどんな影響を及ぼすのか、すべてを見越したたうえで話している。

そしてこの人は、加藤にも及川にもメリットがあると踏んで、私との結婚を受け入れると決断した。

それに比べて、自分はただ思いだけで突っ走っていたにすぎない。父ですらそうだ。
あれだけ加藤製陶のためにと声高に言いながら、この縁談については個人を優先して端から断る一択だった。
自分を犠牲にしてまで受け入れる覚悟を決めているこの人に、到底敵うわけがない。

そう頭では理解していても、結婚ともなればどうしたって拭いきれない不安はあるのも事実だ。

< 16 / 174 >

この作品をシェア

pagetop