跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
しかし、盛者必衰の理は加藤製陶も例外ではない。
 
父が経営に携わるようになる前後から、ギャラリーを訪れる人足に陰りが見えはじめた。
それを察知してすぐさま新作を発表したり目新しい形の商品を提案したりしても、ほんの一時取り上げられるだけで、以前ほどの集客はできなくなっていった。
不動の人気だと思われた定番商品も、売り上げの減少傾向が顕著に表れはじめた。

代わりに、世の中には海外製の安価な商品が溢れるようになっていく。
それでも当初は、日用遣いは安いもので来客時や贈答用は高価なものでと、加藤の商品もそれなりの需要があった。
が、時代の流れとともに状況は瞬く間に変わっていく。


安価だけが取り柄で、単色で飾り気のない地味一辺倒だった海外製品も、次第にデザイン性に優れ、人々の関心を集めるようになる。そんなものが手軽に購入できるようになれば、値の張る加藤の製品はどんどん霞んでしまう。

おまけに、陶器とは別ラインで製造していたタイルも、生活様式の変化に伴って使われる場面が極端に減り、急激に衰退していった。ほどなくして加藤製陶は、タイルの製造停止を決断している。
 
父が社長を務める現在、東京からの撤退を検討されるほどになってしまった。


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