跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「掃除とか食事は、どうしてるんですか?」

「掃除は業者にお願いしている。食事は外食か秘書が用意したものを食べている」

親子三人で一般的なマンションに暮らし、家事はほぼ母がこなしている私の実家とはずいぶん状況が違う。
キッチンを覗くと、千秋さんの申告通り、明らかに使われておらず真新しいままだ。にぎやかな我が家と比べてしまい、なんだか切なくなる。

「千秋さん」

くるりと振り返って、視線を合わせる。

「なんだ?」

「私、掃除は苦手なので、そのまま業者にお願いしたいです。でも、食事は私が用意したら迷惑ですか?」

一緒に暮らせば、遅かれ早かれ素の自分はばれてしまうだろう。それなら、変にごまかすべきじゃない。あらかじめ苦手なことを隠さず申告しておけば、へたに期待をされずにすむ。
 
とはいえ私たちは縁あって夫婦となったのだから、あまりにも他人行儀な暮らしは望んでいない。むしろできるだけよい関係を築いていきたいと、私は思っている。ここで一緒に食事をする時間を持てれば、互いをもっと知り合えるはず。

「ほおう。自宅で愛妻が手料理を作って、俺の帰りを待っていてくれるのか」

「あ、愛妻……」

ペット枠ではなかったのか。
〝他人行儀〟を軽く超えた関係性に、動揺させられる。別に、愛玩動物扱いされたいわけではないが、突然愛妻とか言われてもどう反応してよいのかわからない。

「なんだ、違うのか? まあいい。キッチンは好きに使うといい。付き合いで食べてくる日もあるが、そういうときは知らせるようにするから頼んだぞ、奥さん」

「は、はい!」

〝奥さん〟の部分は、気恥ずかしいか聞き流しておこう。
千秋さんに頼まれたと気をよくして気合の入った返事をすると、彼は私の頭をポンポンと軽く叩いた。

到着時に手を引かれたり今のように触れられたり、意外とスキンシップが多い。少し気恥ずかしいが、こういうのもいずれは慣れていくのだろうか。

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