跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「愛佳、部屋はもう片付いたか?」

「ばっちりです」

それなりに時間がかかったものの、昨夜のうちに終えられてよかった。

「なんだ。終わってたのなら、夜は俺のベッドに来てもよかったのに」

「なっ」

朝から意味深な言い回しをして流し目を送るのは、本当にやめて欲しい。からかわれているとわかっても、勝手に胸がドキドキしてしまう。

瞬時に赤らんだ顔を、正面からばっちり見られている。千秋さんの肩は、堪え切れなかった笑いで揺れた。

「いつ来てくれても、かまわないんだがな」

「い、行かないから!」

相手がこんな調子だとこちらの口調も雑になる。

「なんだ、残念」

少しも残念そうでない様子にいら立ちを露わにしたが、素知らぬ顔で流されただけ。それどころか、「迎えに行ってやろうか?」と追い打ちをかけられて、羞恥で言い返せなくなる。

なんか、悔しい。
そんなふうに考えてしまうあたり、私の中にこの人と夫婦になったのだという実感はあまりないのかもしれない。


< 35 / 174 >

この作品をシェア

pagetop