跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「千秋さん。加藤製陶のために尽くしてくれて、本当にありがとうございます」

食後に、父からもらってきた高級なお酒を差し出しながら畏まって礼を伝える私を、彼はおもしろそうに見てくる。

「千秋さんに、なにかお礼ができたらいいんだけど……」

「こんな豪華な食事を用意してくれたのに、さらにと言うのか?」

「これはこれ。家事は元からやるって言ってたんだから、正式なお返しにはなりません。なにか、欲しいものとかないですか?」

自分から尋ねてみたものの、なんでも持っていそうなこの人に、改めて欲しいものなどあるのだろうかと首を捻る。

私の貯金で買えるものなど知れているし、大企業の社長なのだから適当なものなど渡せない。彼が所有するものは、そのまま他者からの評価につながるのだから。

「へえ。かわいいことを言ってくれるんだな」

「真面目に話してるんですぅ!!」

いつも通りのからかいに、真剣に話しているのにと、つい唇を尖らせて拗ねた口調になる。

「じゃあ、こちらも真面目に返そうか」

どうやらちゃんと答えてくれるようだと、直前の軽いいら立ちをごまかすように居住まいを正した。

「愛佳にしか払えない対価を要求するとしよう」

気を引きしめながら、不遜な態度の千秋さんと向き合う。なにを言うつもりか、その表情から読み取れないかとじっと観察する。


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