跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「愛佳は、なにがそれにふさわしいと考えるか?」

簡単に答えをくれるつもりはなさそうだ。私に聞かれても、正解を導き出せる気がしない。

「うーん、新しいネクタイ……とか?」

いくら彼を見つめても、なにも読み取れない。
とんでもないものを要求されてしまう前に、自分で用意できそうなものを口にしてみた。もちろんブランド物になるだろうが、ネクタイぐらいなら私にも払えなくもないはず。ただし、彼のクローゼットには数えきれないほど常備されていそうだけど。

「いらんな」

やっぱりかと、すぐに切り替えて新たな案を考える。

「じゃあ……ちょっと高級な万年筆、とか?」

「それも、必要ない。愛佳、たいていのものは金さえ払えば買えるし、希望も叶えられる。俺にはその力がある」

言葉だけを聞いていれば、いかにも傲慢だ。おそらく冗談だろうと笑いそうになったが、鋭さを増した彼の視線には茶化した様子などいっさい見られない。

「ま、まあ、そうだけど……」

「俺は、愛佳にしか払えない対価を要求したんだ」

千秋さんが発する圧に、座っていながら後ずさりたくなってしまう。決して脅したり怖がらせたりはされていないのに、追い詰められたような気にさせられるのはなぜだろうか。

変な言い回しだと感じたが、さっきから彼は一貫して〝愛佳にしか払えない〟と主張している。一体なにを望んでいるのだろうか。

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