跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「私に、しか……か、肩もみ?」

これでは小学生の発想だ。自分の発言とはいえ、緊張感の高まるこの状況下でよくそんなことが言えたものだと、自身に呆れる。
もちろん、苦し紛れの発言だ。千秋さんにもふんっと鼻で笑われただけで、否定の言葉すらない。
 
私にしか払えない対価。言い換えれば、私だけがしてあげられるなにか。
家事はお礼にならないし、お金で買えるものでは条件に満たない。そうなると、なにをどうすればいいのか……。

ふと、先日菊乃さんと交わしたやりとりを思い出した。
岐阜の土産を手にひとりで意気揚々と彼女を訪ねたところ、帰り際に『ひ孫を楽しみにしてるわ』と言われてうろたえたのは記憶に新しい。

菊乃さんにとっての孫は、千秋さんしかいない。それに、加藤家としても私はひとりっ子だ。当然両家は、私たちの子どもを楽しみにしているに違いない。

ただ、私の扱いはペットかおもちゃのようなものだ。千秋さんから女として見られている気がまったくしない。

見合いの場で一応それらしい話は出たものの、彼に急いでいる様子は感じられなかった。それに、実際に一緒に住みはじめたが、からかわれたとき以外にそういう雰囲気になったことはない。

はたしてこのままでいいのかと少しは気にしていたけど、まさか自分から子どもの話を切り出したり、そうなるように仕向けたりする勇気はなない。そもそも経験がないから恐怖すら感じている。千秋さんがなにもしてこないのに甘えて、触れずにいた話題だ。

ここで変な提案をして、散々いじられたらいたたまれない。ほかになにを差し出せるだろうかと、考えをめぐらす。

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