跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
普段の意地悪な彼とは違って、昨夜はとにかく私を気遣ってくれた。先に進む前に必ず同意を求めてくれたし、私に合わせてゆっくりと進めていく。少しでも私が戸惑えば、すぐさまキスをして慰めてくれた。

翻弄される中でも、彼のそういう様子が嬉しかったのだけはしっかりと覚えている。おかげで、初めての相手が千秋さんでよかったと思ったほどだ。

『愛佳なら、いくらでも触ってかまわない』
『俺を見ろ。お前は今、俺に抱かれてるんだ』
『お前の初めては、これからも夫である俺のものだ』

私を抱きながら千秋さんが発した言葉が、次々によみがえってくる。
場数を踏んできた彼にはおなじみの相手を喜ばせる言葉なのかもしれないが、初心者の私には破壊力がありすぎて、すっかりのぼせていた。

ただ……。
 
「あのまま寝ちゃうって、どんだけお子様なのよ……」

せめてシャワーを浴びるとか話しをするとか、もう少しなにかあっただろうに、まさかの寝落ち。千秋さんを呆れさせてしまったかもしれないと、なんだか気分が沈んでくる。
私は彼を満足させられたのだろうか……。

それでも、今後は寝室を共にするって言ったぐらいだから、嫌われたわけではないのだろう。たぶん。
 
千秋さんが浴室から出てくる音が聞こえて、時間が迫っていたと思い出す。

「いけない、準備しないと」

慌ててシャワーを済ませると、いつもより簡単な朝食になってしまったと詫びながら出勤の準備を進めた。

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