桜が咲く頃に、私は
予定外のことは常に起こる。


元々翠だって連れて来る予定もなかったし、花子なんて考えてもいなかった。


「ただいま」


アパートのドアを開けてそう言うと、奥の部屋から空の声。


「随分早いな。まだ学校の時間だろ? ああ、買い物は行っておいたぞ。頼まれた物も大体買ったつもりだけど、足りない物があったら……」


顔を覗かせた空が、この事態に気付いて固まった。


私だけだと思っていたら、翠と花子の姿も見えたら、そりゃあ固まりもするかな。


「よ、天川。学校祭ぶり?」


軽いノリで手を挙げる翠とは違い、さっきまでの威勢はどこに行ったのか、花子はバツが悪そうに顔を逸らしてもじもじしていた。


「家の前でうろうろしてたから連れて来たよ。翠には言ったけど、なんなら花子にも手伝ってもらうから」


「い、いや、お前……何勝手に決めてんだよ! 俺とこいつはもう終わったんだよ! わかってるだろ!」


慌てて駆け寄って、花子に伸ばした手。


私はそれを邪魔するように立ちはだかって、首を横に振った。


「ダメだよ空、それじゃあダメなんだ。納得出来なかったら、ずっと心のどこかに引っ掛かってるんだよ。そんなの忘れられないんだよ」
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