桜が咲く頃に、私は
翠に背中を押されて、教室に向かって私は走り出した。


あの日の言い訳とか、いじめのこととか、頭の中でぐるぐる回っていたけど、結局何を話せばいいのかわからなくて。


「広瀬! ちょっと!」


教室に入るなり大声で広瀬を呼んで、私に呼ばれるのは想像していなかったといった様子で驚いてこちらを見ていた。


「え……い、いや、なんで……」


「良いから!」


戸惑っている広瀬に歩み寄って腕を掴み、廊下へと引っ張って行く。


どこに行けば良いのか、どこなら良いのかわからずに、とにかく人のいない所へと。


「ちょ、待って! 待ってって! 桜井さん!」


「ダメ、もう待たない!」


「なんで! なんで桜井さんはそんなに自分勝手なんだ!」


階段の踊り場で私の手を振り解いて、その場に立ち尽くしたまま、睨むようにして私を見る。


そんな目をされるのはつらい。


けど、ずっと隠したままにしていた私が悪いんだ。


「あの日、桜井さんがキスしてた人は天川さんだよね? 確かに天川さんは僕なんかよりずっとかっこいいし、好きになるのは仕方ないと思うけど。じゃあ僕は一体何なんだ! 桜井さんの……何だったって言うんだ」
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