桜が咲く頃に、私は



「え、その話マジなの? じゃあやっぱりあんた達は一回死んで、んで余命を二人で分けて生き返ったってこと? なにそのぶっ飛んだ話」


天川が客が少ない隠れ家的なバーに案内してくれて、そこで落ち着いて話すことになった。


私も天川も、半信半疑だったけど……お互いの頭上に見える数字が私達の余命だということは容易に想像出来た。


「180」という、約半年を表す数字が表示されていて、これが尽きた時に私達は死ぬんだなって、その実感だけはあった。


「あの天使、次に会ったらぶっ飛ばしてやる。先に条件言わないし、説明長いしでよ、ふざけんなって思うわ。何が一日一回、10秒以上口づけを交わしてくださいだよ……幸せを感じたら余命が減るとか、後出しもいいとこだろ」


お酒を飲みながら、ため息をつく天川と同じように、私も大きなため息。


そうだよね……何が悲しくて、名前くらいしか知らない人と毎日キスしなきゃならないんだか。


彼氏でもそんなにキスしないよ。


「え、なにその条件。ありえないっしょ。だって早春、今日付き合い始めたのに。広瀬とさ」


あー、そうだった。


私、広瀬と付き合い始めたんだったわ。


< 15 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop