桜が咲く頃に、私は
まるで私を押し倒しそうなくらい迫り、思わず後退りをしてしまう。


「夢、それは大丈夫だ。早春は一切手を出してないから、夢との約束は破っちゃいない。言っただろ? 決着をつけてきたんだよ」


部屋の隅を指差して見せた空と、そこにあるはずの物が消えていることに気付いた夢ちゃん。


驚いた様子で空の顔を見て、もう一度部屋の隅を見た。


「そう。もう吹っ切れたんだね。でも、本当に良かったの? 大学も辞めて、音楽も辞めて……私だって高校に入ったらバイトもするから、気にしなくて良いんだよ?」


「良いんだよ。未来は仲間に託したし、何より大事な人を守れたからそれで。果たせなかった約束も果たせたし」


「ふーん。またバカなことしてるかと思ったけど、随分スッキリした顔しちゃって。まあ、そのおかげで私はずっと心配だったしイライラしてたんだけど!」


この夢ちゃんには、空も私も頭が上がらない。


黙って出て行ったし、夢ちゃんが怒る気持ちもわかるよ。


「あ、そうだ夢。怒られついでにもう一つだけ言っておきたいことがあるんだけど」


「あぁ? 何よ。私もう眠いんだけど」


「俺と早春は付き合うことにしたから」
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