桜が咲く頃に、私は
昼休み。


パンと飲み物を買いにホールに。


「早春さ、怖くて聞けてなかったけど……後何日なわけ?」


自販機からパンを取り出して翠を見ると、心配そうな表情を浮かべている。


絶対に心配するだろうから言わなかったけど、やっぱり事情を知っていたら気になるよね。


「鋭いねぇ、翠は。後43だけど、減り方によるかな。厳しく見て、まあ、15日くらいってとこかな」


「15日ってあんた……冬休みが終わるくらいに死んじゃうってこと?」


「……そうなるね。でも、生き返ってから今まで、何だかんだ楽しいし充実してるしさ。後悔はないかな」


翠はいつも、あっけらかんとしていて、私が死ぬとわかってもいつもと変わらなくて。


だから一緒にいて気が楽なんだ。


そう……私は思ってたのに。


「ちょっと……ちょっと来て」


急に俯いて、私の腕を引っ張ると足早にホールから出たのだ。


一体翠に何が起こったのかわからないけど、こんな翠は始めて見た。


「な、な、何。翠どうしたの!?」


慌てる私を無視して、なおも翠は歩き続けて、やって来たのは深沢達が待つ屋上前の踊り場だった。


だけど翠は、深沢達をスルーして屋上のドアを開けて外に出た。
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