桜が咲く頃に、私は
「おいおい桜井! クリスマスに誕生日とか、どんな激アツイベントだよ! 今日プレゼント買いに行くからな! 南山も行くだろ!?」
翌日、学校に着くと、私と翠を見た深沢が大はしゃぎでそんなことを言い出した。
きっと、毎年誰も相手をしてくれなくて、寂しかったんだろうな。
騒がしい教室の中でも、その弾んだ身体と声は一際目立っている。
「なんでお前が張り切ってんだよ。学校祭以外だと天川には一回会っただけで、しかもスルーされてただろ」
「良いんだよ! イケメンの誕生会ってだけで楽しいのは確定なのに、それがクリスマスだぞ!? ここで張り切らなきゃどこで張り切るんだよ!」
山田と佐藤に相手にしてもらえなかったら、深沢はぼっち確定だからね。
「姫ちゃんごめんね。彼がその日は親がいないから家に来ないかって」
「私はクリスマスイルミネーションを見に行くんだよね。姫ちゃんも早く彼氏が出来るといいね」
何気ない、ごく普通の会話だけど、深沢には深い傷を負わせたようで。
「リア充は死ね! クリスマスだからって盛りやがって! こっちはな、純粋にイケメンとイエス・キリストの生誕を祝うんだよ! テメェらはイチャイチャする口実にしてるだけだろ! 死ね!」
と、両手で中指を立てて大暴れしていた。