桜が咲く頃に、私は
「それにしても何あの女。あれでも早春の親かっての。もしも槍を持ってたら、ケツの穴から口まで突き刺してやりたいわ」
「は、はは……翠さん、独特な表現だね。でも、そんなに強烈なお母さんだったんだね。大丈夫? お姉ちゃん」
アパートに帰り、夕飯を作りながらも翠の愚痴は止まらない。
今思い返せば、幼い頃からの記憶の中のお母さんはいつも笑っていたけど……それはどれも機械的で、さっき感じた「仮面」を被っているかのようだ。
「大丈夫。まあ、ちょっとあまりにも酷すぎて、言いたいことも言えなかったから、もう一回会いに行こうとは思ってるけど」
「嘘でしょ……あんた、あれともう一回会うとか、どれだけドMなわけ。もうやめときなよ。ああいうタイプは何言ったって聞かないよ?」
あれを見たら、誰だって同じ反応を示すだろうな。
私は別に、話をして仲直りをしたいとか、誤解を解きたいとか考えているわけじゃない。
最初はそう思っていたけど、会って1秒でそれは無理だと判断したから。
「それにしても、お母さんが他の男と遊んでるとか……私はそれだけで無理かも」
「夢ちゃんは良い家庭に育ったからね。別にさ、もうあの人は離婚してるから、男遊びしてようが文句を言うつもりはないけどね」