桜が咲く頃に、私は
問題はそこじゃないんだよね。


私の心に引っ掛かってるのは。


「にしてもムカつくわあいつ。なんか復讐とか嫌がらせとかしてやろうよ。鍵穴に接着剤流し込むとか、家の窓ガラス全部割るとか。壁に落書きでもする?」


「翠がムカついてるのもわかるけどさ。そんなことしたらあの人、平気で警察に言うよ? 私を自分の子供だと思ってないくらいだから」


「失うものが何もない毒親は無敵かよ……男に捨てられるのが一番効くかもね。さっきのチャラいやつ、早春に興味持ってたから誘惑してみる?」


「絶対に嫌だ」


そもそも私はそんなことがしたいわけじゃない。


空からもらった命をそんなバカバカしいことには使いたくないから。


私がやるべきことは、心残りをなくすことで、遺恨を残すことじゃない。


「フフッ。そんな人の所に行ったって聞いてちょっと心配だったけど、お姉ちゃんがそう思ってるなら安心したよ。おかしなことはしそうにないから」


「そりゃそうでしょ。あんなやつの為に、私の人生をめちゃくちゃにされたくないし、今後関わるのも勘弁してほしいよ。あ、お父さんに養育費を止めてもらおうかな。てか、あの家に住んでないならお父さんが親権持ってても良いよね」


なんて、もうすぐ死ぬ私にはどうでも良かったけど、黙っていると感情が爆発しそうだったから、いつもより喋ったかもしれない。
< 270 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop