桜が咲く頃に、私は
そして、とどめとばかりに長いキスをされて。


「大丈夫……お姉ちゃんは大丈夫だから。愛してるよ」


耳元でそう囁いて腕を解いた。


慌てて振り返ってみると、夢ちゃんは恥ずかしそうに頬に手を当てて。


「もう、本当に恥ずかしいんだから!」


そう言って照れて見せた。


「これ……空もやられてたの? 嫌がってる姿が目に浮かぶわぁ……」


やられた私も恥ずかしかったのに、年頃の男子が嫌がらないはずがないか。


でも……なんだか、自分のことを受け入れてくれているようで心地良かった。


もらった愛情はこれだけではないだろうけど、こんなことが出来るんだから、普段から愛に溢れていたのだろう。


「でもさ、何となくわかったよ。夢ちゃんがいつも私と一緒に寝たがるのも、空が死ぬのが怖いって、私の手を握って寝たのも。そんなお母さんがいたからなんだね」


「……お兄ちゃんが甘えてるのは想像したくないな。あのクールぶってるお兄ちゃんがねぇ……」


兄妹からすれば、お互いにそう思ったりするんだろうな。


私は一人っ子だからあまりその感覚はわからないけどさ。


「……お姉ちゃん。お姉ちゃんもやっぱり、死ぬのが怖い? あ、信じてるわけじゃないけどね? 妄想でも、死ぬなら恐怖とか感じるのかなって」
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