桜が咲く頃に、私は
「言ったでしょ。鬱陶しいくらいに愛情をもらってたから。お兄ちゃんは本気で嫌がってたけど……でも、お母さんが死んだ時に一番泣いてたのはお兄ちゃんだったかな」


決定的な違いがあるとすれば、ここだろうな。


構ってほしいのに、全く私を見てくれなかった母親と、嫌がっていても鬱陶しいくらいに愛情をくれた母親。


嫌がっていても構おうとするのは、状況によっては私と同じように家出を考えることになるかもしれないけど、夢ちゃんのお母さんはきっとそのバランスの取り方が上手だったのだろう。


「ちなみに、鬱陶しいってどれくらい鬱陶しかったの? 空が嫌がるくらいってどんなことされてたんだろ?」


ただの興味本位だけど、私が死んだ後に使えるかなと思って。


「えー? やるの? 本当に? まあ、お姉ちゃんだからいいけど。ちょっと動かないでね?」


あまり乗り気ではない様子で立ち上がった夢ちゃん。


私の背後で立て膝をつくと、背中に覆い被さるようにして抱き締め、肩にあごを乗せて、頬に何度もキスをして来たのだ。


「えっ!? わ、わわっ!」


くすぐったくて、思わず顔を背けようとしたけど、手で顔を固定されてしまって動けない。
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