桜が咲く頃に、私は
その後、三人でご飯を食べて、気まずい空気のまま後片付けをして。


お風呂から上がって夢ちゃんと一緒に布団に入る。


「……早春さん、ごめんね」


ぽつりと呟いたその言葉に、私は顔を夢ちゃんの方に向けた。


「私こそ……なんか黙っててごめんね。彼氏がいるのに、勘違いさせるみたいなことしてさ」


「早春さんが初めてうちに来た日にね、お兄ちゃんと二人で空を見上げてるのを見てさ、なんだかお母さんがいるみたいに思ったんだ。お母さんが生きてた時、同じように夜空を見てたなって」


お母さんを思い出したって、確か前に言っていたな。


私に似てるなんて、きっと二人のお母さんはお(しと)やかとは無縁な人だったのだろう。


「まさか、まだ本当のこと言ってくれないなんて思わなかったけどさ。いつか聞かせてくれるよね? お兄ちゃんと早春さんの口からさ」


「……やっぱりいい子だね、夢ちゃんは」


そっと頭を撫でると、夢ちゃんは嬉しそうに笑って。


「お兄ちゃんの彼女じゃなくても、お姉ちゃんって思っても良いですよね? 早春さんの匂い、安心するから」


「うん、いいよ」


私がそう呟くと、夢ちゃんは嬉しそうに私の布団に潜り込んでしがみついて来た。
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