双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
「ああ。数年前にも同じようなことがあっただろ? あそこまでひどくなる前に警察とか弁護士とか、今回は早めに手を打つよ。ひとまずこれは、業者さんが引きとってくれるっていうから。姉ちゃん、そろそろ保育園の迎えだよな? 時間を取らせて悪かった。行ってきなよ」

「……」

「姉ちゃん? 聞いてる?」

あのときの出来事が頭の中に蘇ってきた。

四年前の旅館への嫌がらせ。今、まったく同じことが起きている現実。

ガタガタと身体が震え出し、身体から血の気が引いていくのが分かる。

「姉ちゃん? どうした? 顔色悪いけど」

仁紀が心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「だ、大丈夫。迎えに行ってくるね」

精いっぱいの作り笑いを浮かべてその場を離れた。

車を運転し始めてからも気持ちが落ち着くことを知らない。

やはり蒼斗さんとは一緒にいられない運命なのだろうか。

黒い影がゆっくりと私に忍び寄ってくる。やっと手に入れたと思っていた幸せが、砂時計のサラサラな砂のように崩れ落ちていく。

その現実に頬を涙が零れる。

これから迎えにいくというのに。

泣いてなんかいられないのは分かっていても、涙がとめどなく溢れこらえきれなくなって車を端に寄せ止めた。

「やっぱり一緒にいたらダメなのかな……」

絶望が広がるなか、声を震わせながらそう呟いた私の声は誰にも届かない。
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