双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
「姉ちゃん? 今どこ?」

「裏の家にいるけれど、どうしたの?」

「ちょっと茶房の厨房まで来られる?」

いつもみたいにおちゃらけた感じではなくて、その声色は暗いように思えた。

「分かった。今から行くね」

妙な胸騒ぎを覚えながら小走りに茶房へと向かった。

「仁紀、なんかあったの?」

裏の入り口から茶房の厨房へと足を進めた。

「これは?」

厨房台の上に積み上げられた発泡スチロール。その光景に驚き、板前さんと話し込んでいた仁紀に尋ねた。

「業者さんから届いたんだ。中は生鮮食品。姉ちゃんから頼まれたことになっているけれど……こんな大量の数、頼むかって話で。一応確認しようかと」

「え? 私頼んでないよ」

「だよな。業者さんのところにメールでうちの旅館の姉ちゃんの名前で発注があったらしい」

「そんな……」

「最近、旅館にも無言電話があったり、旅館の口コミサイトで低評価が続いたり……明らかな嫌がらせが続いていて、同業者の嫌がらせかもって父さんと対策を考えていたところだ」

「そうだったの?」

そんなことがあったなんて。寝耳に水だった。表情が強張っていくのが分かる。
< 118 / 171 >

この作品をシェア

pagetop