セカンドマリッジリング ―After story—
「そうですか、俺の所にも連絡はありません。何度かメッセージも送りましたが既読にもならなくて」
颯真がスマホを取り出しもう一度確かめるように画面を開いているが、やはり何の変化もないらしく彼は黙ってスマホをポケットへと入れる。
「ああ、どうしたらいいの? 涼真に何かあったら私は、私はもう……!」
颯真になら連絡をしているかもしれない、そんな期待も無くなり颯真の母はソファーに座ったまま両手で顔を隠し泣き出してしまう。
涼真は深澤コーポレーションを継ぐだけの存在ではない、この母の期待や依存そして歪んだ愛情を一身に受けて育てられた子供だった。
「落ち着きなさい、お前が泣いても涼真が帰ってくるわけじゃない。そんなに騒ぐのならいつも通り大人しく自室にでも籠っていなさい」
「そんな、あなたまで……酷いわ!」
夫である深澤 斗真の言葉は妻に対してとは思えないほど冷たいものだった。颯真の母は零れる涙を止めることも出来ないようで、斗真に指示されそのまま使用人の女性にどこかへと連れて行かれてしまった。
「……もう少し優しい言い方は出来ませんか、母さんが気の毒です」
「子供が夫婦の事に口を出す必要は無い、今の問題は涼真の事だけだ」
変わらない、と颯真は思う。何年、いや何十年経ってもこの人達の関係は何も変化しないのだと。