セカンドマリッジリング ―After story—
「そうですか、ならこれ以上は口出しはしません。それで、俺に出来そうなことは何かあるんですか?」
相手が必要ない話はしたくない、そういうのならば自分も同じように返せばいい。颯真は両親との関係をどうにかしようなんて、ずっと前に諦めてしまっていたから。
……ただ、この環境に居続けなければならない兄の涼真には申し訳ないと思ってはいたが。
「涼真がいつ帰ってくるのか分からない、そんな状況だ。しばらくはこのまま様子を見るつもりだが、ずっとそのままという訳にはいかないだろう。その時は……分かっているな?」
「……俺には涼真兄さんの代わりなんて出来ませんよ、それは父さんが一番よく知っているでしょう?」
ずっと颯真は父に従順な兄と比べられてきた、それは彼が医師の免許を取りこの家を出るまでずっと続いたのだ。涼真は颯真を庇ってくれたが、父と母の関心は最初から最後まで兄の涼真だけのものだった。
……それを今さら、分かっているな? なんて言葉で颯真を良いように扱おうだなんて。
「颯真さん、大丈夫?」
父に対する怒りからか、震える手に花那がその華奢な手を重ねてくれている事に颯真は気付く。心配そうに彼を覗き込む花那の瞳は颯真の父の言葉によって不安に揺れているのが分かる。
「大丈夫だ、こんな話はさっさと終わらせて帰ろう」
颯真が小さな声で花那にそう伝えると、彼女はホッとした顔をする。こんな場所にいつまでも花那を置いておきたくない、そう思った颯真は一歩前に出て父と向き合った。