セカンドマリッジリング ―After story—


「どうして? 今までそんな酷い事を兄さんがいう事なんて無かった、それも花那(かな)さんの所為なの?」

 真由莉(まゆり)はどうしても颯真(そうま)の変化を悪いものとして花那の所為にしたいらしい。自分に都合の良かったはずの兄の変わりようが気に入らなくて、花那にあたるしかないのかもしれない。
 しかしそんな真由莉の言葉に颯真はますます怒りを感じ、彼女を玄関へと引っ張って行く。このまま外に追い出すつもりなのだろう。

「いいの、颯真さん? 真由莉さんは何か話があるんじゃ……?」

「いいんだ、この家に花那を傷付ける人間は入れるつもりはない。君も俺の家族が来たとしてもドアを開ける必要は無い」

 はっきりとそう言い切った颯真に、花那はそれ以上は何も言わず彼が真由莉を玄関から追い出す姿を見ているしかなかった。
 真由莉を追い出した玄関からはまだ「いいの⁉ 私をこんな目に合わせて!」と彼女の怒鳴り声が聞こえてくる。近所迷惑にならないだろうかと心配する花那に颯真はしばらく考えた後、口を開いた。

「引っ越しも視野に入れておかなけばいけないのかもしれないな」

 そう言われて花那は少し戸惑った、この家は少ないとはいえ颯真との思い出がある。五年間すれ違いだったが、それでもここで二人で共に生活をしてきたのだから複雑な気持ちになるのは当たり前だ。
 でもここに住み続ければまた真由莉はやってくるだろう。そう思うと花那も気が重くなり、颯真の言う通りだと考えた。

 結局……真由莉が諦めて帰った後に近所に騒いだことの謝罪を済ませると、二人で引っ越し先を探すため出掛けることにした。


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