セカンドマリッジリング ―After story—


 ……それにしても、と花那(かな)は思う。普段の颯真(そうま)はどちらかと言えば物静かだ、仲は良さそうに見えるがずいぶん彼らはタイプが違うように見える。そんな花那の戸惑いに気付かないのか、大柄な男性は彼女にニッカリと満面の笑顔を向け話し始めた。

「はじめまして、颯真の奥さんですね。ああ、聞いていた通り本当に美人だ! でもうちの嫁さんも負けないくらい可愛いですけれどね、ははは!」
「え、あ……はじめまして」
「いや、本当に電話がかかってきたときは驚きました。いつも澄ました顔をしている颯真が俺に頼み事があるなんて言ってきたんですから」

 いきなり話しかけられそう返事をするので精一杯な花那に、マシンガンのごとく言葉を続ける男性。そんな様子を見て慌てて颯真が間に割って入ってくる。

「先輩、少し落ち着いてくれませんか? 俺の妻が驚いて怯えてますから」
「そ、そんなことは……っ」

 全く驚いていないとは言わないが、怯えているなどと言われたら男性も良い気はしないのではないだろうか? そんな心配をする花那に颯真は気にしなくて良いと言うように首を振った。
 どうやら花那が思っているよりも、颯真とこの男性はお互いの事を分かり合った関係なのかもしれない。

「怯えって……いくらなんでもそんなことはないだろ? ああ、自己紹介が遅れました。俺は名賀(なが) 瑛太(えいた)、医学部時代に颯真の面倒を見てやってたんです」
「見てやって、ですか? 面倒を見てもらっていたの間違いでしょう、何でもかんでも俺に押し付けて自分は楽していたくせに」

 普段こんな風に軽口をたたく颯真を見ることはできない、驚きもあるが夫の新しい一面を見れた嬉しさで花那も胸がドキドキしていた。



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