セカンドマリッジリング ―After story—


 用意した荷物を乗せての颯真(そうま)運転する車は二人の家から離れていく。住宅街から市街地へ、そのままどこかの宿泊施設に行くのかと花那(かな)は思っていたが車が止まる様子はない。
 窓から見えていた並んだビルが緑の木々に変わった頃、車は細い道に入り込み可愛らしいペンションの前で止まった。

「え? 颯真さん、ここは?」
「ああ、花那を連れてくるのは初めてだったな。心配しなくていい、ここは安全だから」

 花那が聞きたいことはそう言うことではないのだが、颯真はそんな彼女を車から降ろすと手を繋いで建物へと向かって歩いていく。さっきの電話はここの予約を取っていたのだろうか? 不思議に思いながらも花那は颯真の隣に並んだ。
 玄関の扉の横にはインターフォンではなく、銀の呼び鈴。慣れた様子で颯真はそれを鳴らすと花那に向かって微笑んだ。

「最初は驚くかもしれないけれど、いい人だから」
「え? それってどういう……?」

 颯真の言葉の意味がわからず花那はそれを確かめようとしたが、バアン! と勢いよく開いた扉によって遮られてしまった。

「よく来たな、颯真! お前が俺を頼って来るなんて、槍でも降らないかと天気予報から目が離せなかったぞ!」
「先輩、見ての通り今日は晴天です。それにもし槍が降るのだとすれば天気予報では予想出来ないのでは?」

 ドアを開けたのは随分と大柄な男性で、颯真より少し年上に見える。彼も先輩と呼んでいるところからすると、二人は先輩後輩の間柄のようだ。


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