セカンドマリッジリング ―After story—


「確かに颯真(そうま)兄さんは涼真(りょうま)兄さんみたいに何でも出来る人ではなかったわ。でもさりげなく家族を支えてくれたり、私が失敗した時にフォローしてくれるのはいつも颯真兄さんの方だったの。決してそれを恩着せがましく言わない、そんな兄さんが頼もしくて……」

 花那(かな)の目の前に置かれた紅茶のカップはとうに空になっている、それでも真由莉(まゆり)の話はまだまだ終わりそうになかった。昔の事を思い出しながらうっとりとした表情を浮かべる真由莉にどう接していいのかも分からぬまま、花那はその話に相槌を打つ程度だ。
 颯真の長所ならば花那だってたくさん言える、だが今それを口にすれば間違いなく真由莉の機嫌を損ねるだろう。
 
「涼真兄さんは誰が見ても素敵だけど、私は颯真兄さんの不器用で優しいところの方が好き。あの人の良さに気付ける、そんな女性は少ないだろうけれど」
「そんなことは……」

 そう言いかけて花那は言葉を止める、彼女を見つめる真由莉の視線が鋭くなったのを感じたからだ。本来なら同じ気持ちだと喜びたいところだったが、真由莉はそうは思ってはいないようだった。

「あら、何が分かるの? 貴女なんかに。深澤家の財産が目当てで颯真兄さんを誑かした、借金だらけの悪女のくせして」
「私は、そんなっ……!」

 多額の借金を抱えていたのは事実だ、それが父親の遺したモノだったとしても。それを颯真が全て代わりに支払ってくれた事も隠すつもりはない。
 それでも花那は夫である颯真や深澤家の財産目当てで、彼の傍にいる事を望んでいるわけではない。働いて欲しいと言われればすぐにでも就職するし、必要以上の贅沢もしたいとは思ってもいない。
 ……だが、そんな花那の気持ちなど真由莉はお構いなしだ。

「ずっと、颯真兄さんにお嫁さんが出来るとしたら素敵な女性なんだろうって思ってたわ。兄さんの良さをちゃんと知って、想い合って……私もそんなお義姉さんが出来たらいいなって」
「真由莉、さん?」


< 61 / 111 >

この作品をシェア

pagetop