セカンドマリッジリング ―After story—

「何? まさか貴女なんかが私に意見でもする気なのかしら、本当に自分の立場ってものを分かってないのね」
「立場、ですか。確かに私にはそういうのが分かってないのかもしれません。ですが……私は颯真(そうま)さんの妻です、意見くらい言う権利はあるんじゃないでしょうか?」

 毅然とした態度でそう言い返す花那(かな)に、真由莉(まゆり)は少し驚き戸惑ったような表情を見せた。まさかこんな風に彼女が強気に言い返してくるなんて予想もしなかったのだろう。真由莉にとって花那は、常に颯真の後ろに隠れている存在感のない女性でしかなかったのだから。
 だからこそ今まで真由莉は彼女を悪者にし、好き放題言ってこられたのだ。兄への不満を全て花那の存在のせいにして。

「はあ? お飾りの妻のくせに意見ですって、笑わせないで。お父様にもお母様にも妻として認められてもいないくせに、よく言うわ」
「他の誰に認めてもらえなくても、颯真さんに必要とされている限り私は彼の妻です」

 真由莉のどんな言葉にも花那は傷つく様子を見せず、どれだけ自分達の想いが強いのかを伝えようとする。ずっと必要とされてないお飾りの妻という存在だと思っていた。だがそれは花那の勝手な思い込みで、今こうしてお互いに想い合い助け合って生きているのだ。
 どうしたらそれを真由莉や義両親に伝えることができるのだろうか?

「私のことをどう思おうと真由莉さんの自由です、今まで颯真さんに影に隠れていた私も悪いのですから。でも……なんと言われても私は颯真さんと離婚する気も、彼の傍を離れるつもりもありません。心から夫を愛していますから」

 真っ直ぐに真由莉の目を見据えて、花那は自分の今の気持ちを言葉にしていく。颯真はそんな妻の様子を黙って見守っていた。


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