セカンドマリッジリング ―After story—
「そんなの本当かどうか分からないじゃない! お金のためならばなんだって言えるでしょ、好きだとか愛してるとかそういう言葉も平気で……!」
どうしても花那の言葉を信じたくないのか、真由莉は冷静さを失い大きな声を上げる。大好きな兄を取られることがそんなにも怖いのか、それとも別の理由でもあるのか。だがここで張り合って感情的になるべきでないことくらい、花那にも分かっている。
真由莉が一方的に声を荒げても、花那はその話が終わるまで静かに聞いているだけだった。そんな花那に様子に悔しそうな瞳を向けながらも、真由莉はとうとう彼女に何も言えなくなってしまう。
嘘偽りのない気持ちで真っ直ぐに自分を見つめ返す、そんな花那に真由莉が勝てるわけもなかった。
「……その目、止めてよっ!」
耐えきれなくなった真由莉がその右手を振り上げた瞬間――
「ずいぶん騒がしいようだけど、何かあったの? もしかして花那さんが何か……」
「お母様、花那さんが酷いのよ! 私は二人のためを思って話をしているのに、彼女はそれを全く聞いてくれなくて」
騒がしさに気付いたのか、颯真の母が扉を開けて顔を出す。しかし彼女の言葉には花那を非難する言葉が含まれており、最初からこのタイミングで声をかけたのかとも思われた。
真由莉も今までの話とは全く違う事を母親に伝え、まるで自分が被害者だと言うように振る舞って見せる。そんな娘をかばうように、母親は呆れたような視線を花那に向けてくる。
「……花那さんはいつまでたっても、私たちと分かり合う努力をしようとはしてくれないのね。本当に残念だわ」