セカンドマリッジリング ―After story—
颯真の母もこういう時に誰を攻撃するのが一番効果的かを良く分かっている。自分よりも立場が弱い人間……つまり花那になら何をしてもいい、どんな言葉を浴びせてもいいと思っているのだ。
しかも自分たちは正しい、間違っているのは彼女だと本気で思っているのだから質が悪い。
「母さん! どうしてそうやって何もかもを花那の所為にするんだ。言いたいことは俺に言って欲しいといったはずだろう? それに分かり合う努力をする気がないのは、母さんと真由莉の方じゃないか」
「そんなことないわ、私たちはいつだって花那さんに理解してもらう努力を……!」
そう母親が言い返した途端、颯真の瞳が冷たく鋭さを増したような気がした。花那はそれに気付き彼の服の袖を掴んだが、それもあまり意味をなさなかったようで。
一歩前へ、母と真由莉へと近付いた颯真の表情は真剣でその様子に二人が後ずさりしようとする。
「花那を理解しようとする、ではなく彼女に理解してもらう……ですか。母さんや真由莉に都合の良い考えを一方的に押し付けることが、二人にとっては分かり合う努力だということなんですね?」
「そ、颯真さんっ! 落ち着いて」
普段なら颯真はこんな風に攻撃的な発言はすることはない。今までだってここまで敵意をむき出しにした彼を花那は見たことがなかった。
一度、花那が若い男に絡まれていた時くらいは少し苛立った様子を見せていたが。