「affair」
「俺とお前の関係を、高畑に話した。
そして、高畑のそれも沢田に嵌められてんだろう、って」


「じゃあ…清太は全部知っていて…」



「高畑に、死ねって言った。
お前が死んだら、沢田も申し訳ないと俺との関係を断つだろうし。
それは、復讐なんだと」


私に復讐する為に、清太は自殺したの?



「結城先生のせいで…清太は…」


「そうか。高畑は本当に死んだんだ」


結城先生は、清太が死んだ事迄は知らなかったのか。


この人が言ったからなのに、
それでも、自分のせいで清太が亡くなって。


その顔が、辛そうに見えた。


「結城先生は、私が美織さんからの罠だと分かっていたのに、なんで、私と…」


何故、知っていて、その罠に引っ掛かるの?



「お前が好きだから…、なんて言うかよ。
お前の事なんか、なんとも思ってない。
昔も今もそうだよ」


アハハと笑う結城先生の声に耳を塞ぎたくなる。


私は、美織さんの胸に刺さったままの包丁を引き抜くと、
それを結城先生に向けた。


その距離は、ほんの数センチ。


こんな男、殺してやろう、って思ったのに、いざとなると刺せない。


結城先生は私の包丁を握る両手を、同じように両手で掴んで来ると。


そのまま、包丁を自分の胸に突き刺した。


「結城先生、何してるんですか!!」


その包丁は、ゆっくりと結城先生の体へと沈んで行く。


「…罠だと分かっていて、お前と関係を持ったのは…。
お前も…一緒に地獄に突き落としてやろう…と思った…。
美織に言われて…俺に近付いて来る…お前も…憎かった…」


私は、美織さんに言われたから、
この人に近付いたわけじゃない。



結城先生が、好きだから。


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