門限やぶりしようよ。
 そう、心細げに言った私の髪にキスをした彼はパッケージを破って中にあったゴムを装着し始めた。するすると大きなものが、透明な薄い膜で覆われるのをじっと見ていた。

「琴音、気になる? 可愛い。やってみたい? 次は琴音につけてもらおうかな」

「次って……?」

 その言葉に不思議になった私に向かって、優は笑った。

「もちろん……体が辛いなら、無理させたくはないけど。俺、琴音を迎えに行くまでは、誰ともこういう事しないってさっき決めたから。今夜は付き合えるまで付き合ってもらう。良い?」

「……私と会うまで……誰とも?」

 男の人というものは、そう言うことをしたがるものという知識はあった。若い彼なら尚更だろう。けれど、彼は私に捧げると決めた数年を誰ともしないで過ごすのだと言う。

「その代わり、琴音もしないでね……俺以外の誰とも。迎えに行くまで。キスもダメだ。約束して、俺だけだと」

「優……うん。私ずっと待つから。大丈夫」

 儚い約束だった。破ったとしても、双方何の罰もない。彼との恋を、未来を失ってしまうだけ。
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