身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
喜びは一瞬でわき上がって消え去る。
アキくんも私を好きなのではと期待する暇もなかった。
誰かの婚約者になることを止めてくれない。
「アキくん……その思い出って、一度きり?」
彼は私の頬を親指で撫で、
「大丈夫。一度きりだ」
と掠れた声で答える。
傷ついた顔をしている気がして、私は微笑んでみせた。
「いいよ。思い出作ろう」
スカートを押さえていた手を退ける。
アキくんの大きな体が私に沈み、一度見つめ合い、ゆっくりキスをした。
触れるだけで涙が出そうだ。
呼吸を止めていたが、アキくんに下唇を舐められて吐息が漏れる。
「ん……アキ、く……」
好きな人との初めてのキスを一生懸命受け入れた。
これが最初で最後だから、味わっておきたい。
味も感触も、幸せも切なさも忘れたくない。
「星来……」
舌が絡み、吐息も混じり合う。
まだ離さないで。
わき上がってくる感情を言葉にはせず、視線で伝える。
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