身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
「おめでとう!」
「おめでとう星来ちゃん!」
水澤病院の事務室では五人の職員が円になり、奥に立つ私へあたたかい拍手を送ってくれた。
「皆のアイドル、門脇先生と星来ちゃんが婚約かぁ。そうじゃないかと思ってたの。院長、門脇先生のこと気に入ってるものね」
長く事務長をしている〝皆のお母さん〟こと柴山さんは、私の隣に付き添う父、水澤拓郎を肘で小突く。
「おいおい柴山さん、まるで僕の一存で決めたような言い方はやめてくれよ」
父は二十年以上昔の大学病院時代は〝イケメンドクター〟などと呼ばれていたらしいが、今はお腹がぽっこりと出て、寝癖も白髪もそのまま、みる影はない。
実家の水澤病院を継ぎ、地域医療を支えている。
最近では、町の高齢化とともに在宅医療にも進出した。
地域の一次救急としてすぐに相談できる、規模は小さいながらも患者さんから愛される父や水澤病院、そして英知先生は私の自慢だ。