身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
「星来ちゃんも、門脇先生と話すときはソワソワしてたもんね」
去年一緒に病院事務に入った園田真緒(そのだまお)ちゃんも、ずっと黙っていた私を責めることなく肩に触れる。
スッキリとしたひとつ縛りのセミロングは、しっかり者でいつも私を助けてくれる真緒ちゃんに似合っている。
「皆さん、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
お辞儀をするとハーフアップの髪が肩から滑り落ちた。
今朝、いつものバレッタがなかったのだ。
ヘアゴムで留めただけの髪はいつの間にか緩んでしまう。
顔を上げ、ヘアゴムの上にたぼまった髪を少し引っ張り整える。
報告は事務の前に、ナースステーションでもやってきた。
遅番の看護師たちはいなかったが、その場にいた人は英知先生の勤務を確認し、「戻ったらおめでとうって言わなきゃ」と騒いでいた。
英知先生も一緒に報告をする予定だったが、父は彼の病院内での人気を考慮して私に適度な距離を取らせている。
ふたり並んで回る必要はない、と急患へ彼を向かわせた。
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