身ごもり一夜、最後のキス～エリート外科医の切なくも激しい執愛～

内科専門の水澤病院は、父と英知先生、非常勤で来ている豊田先生が所属している。
水澤病院を存続させるためにひとり娘の私を医師にする野望もあったらしいが、勉強の才能がまるでなかったせいで早々に諦めたらしい。
代わりに、「星来は旦那さんになるお医者さんと一緒に、この病院と患者さんを守るんだぞ」と言われて育ってきた。
私はそれが誇りだった。
幼い頃から勉強も運動も苦手だった私に母は手を焼いてきた。
目標を医師から看護師に変えても、私は人より覚えが悪かった。
毎日、どうしてこんなに期待に応えられないのだろうと自分を責めた。
しかし目標が〝跡継ぎのお嫁さんになる〟に変わると「そのままの星来で大丈夫よ」と頭を撫でてくれたのだ。
大好きな料理を教えてもらったり、自由な時間で一緒に買い物に出掛けたり、母と本当にしたかったことができるようになった。
今の自分にできる立派な役目を与えてもらえた。
病院を守ってくれるお医者さんに尽くしたい。
父と母に恩返しをする。
水澤病院に英知先生が現れて、父が「門脇くんがこの病院を継いでくれたらなぁ」とつぶやくたび、私は彼との未来を思い描くようになった。