身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
「星来さん、門脇先生からご婚約の話をお聞きしましたよ。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
中郷さんに微笑まれるとドキリとする。
本来なら、英知先生を支えるべき私も彼女のような立場にならなければいけなかった。
患者さんの大事な話をする場には私はおらず、決まって英知先生と中郷さんがセットなのだ。
「あ、見て」
和気あいあいとする事務室から、さらに声があがる。
真緒ちゃんが観葉植物の間から指をさした先には、今度は真っ黒のスーツ姿の男性がやって来ていた。
「あら、近納記念(こんのうきねん)病院の日比谷先生じゃない? ラッキー、今日もいらっしゃるなんてね」
柴山さんが言う。
昨日の今日で、心臓が変に鳴りだした。
「また視察かな」
「最近多いね」
皆、先ほどまで英知先生に向けていたうっとりした視線をアキくんに移す。
大規模な近納記念病院に比べ親しみやすい内装をした水澤病院の中では、洗練された彼の佇まいはハッと目をひく。
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