身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
背筋が冷え、手は完全に止まる。
彼にすべて委ねてしまった私は、あの夜がどの程度の行為だったのかよく覚えていない。
あのときは彼の瞳を見つめてしがみつき、幸せな時間を噛みしめようと必死だった。
アキくんとはそういう行為をしたのだから、妊娠してもおかしくない。
しかしすぐにそれはないと思った。
そもそもしっかり者のアキくんがそんな失敗をするとは考えにくい。
アキくんは思い出を作ろうと言っていた。
それはあの夜ですべて終わらせるという意味だろう。
私を妊娠させたら一番困るのはアキくんのはずだ。
医師の彼に限って間違えるわけはない。
失敗知らずの若きゴッドハンド、そう呼ばれているんだから。
絶対にちがう。
その確信は頼もしくもあり、悲しくもあった。
間違えてアキくんの子を身ごもっていたらどんな未来が待っていただろう。
ありもしないことを考えてもしかたない。
このときはそう思っていた。
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