身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
アキくんを見るのは久しぶりだ。
英知先生の正式な婚約者となってから、私の前に現れなくなってしまった。
会えてうれしいはずが、私は動揺している。
「偶然ですね。ああそうか、日比谷先生は近納先生のマンションに住んでいるんでしたっけ」
アキくんが返事をしないせいで、行き交う車の滑走音だけが響いている。
「近くに住んでいるのに、案外会わないものですね」
英知先生だけが話を続けるが、アキくんに答える気がないとわかると笑みを落とし、「では、雨になりそうですから」と私の肩を抱いてマンションへと向き直った。
まだ傍らにはアキくんがいる。
私の心臓は不穏な音を立てていた。
「ア、アキくん。ばいばい」
手のひらを見せて揺らした。
「……うん」
そうつぶやいたアキくんはポケットに手を入れたまま微動だにしない。
少し伸びた彼の前髪が目にかかっている。
隙間から覗く瞳は、空と同じように濁っていた。
英知先生の正式な婚約者となってから、私の前に現れなくなってしまった。
会えてうれしいはずが、私は動揺している。
「偶然ですね。ああそうか、日比谷先生は近納先生のマンションに住んでいるんでしたっけ」
アキくんが返事をしないせいで、行き交う車の滑走音だけが響いている。
「近くに住んでいるのに、案外会わないものですね」
英知先生だけが話を続けるが、アキくんに答える気がないとわかると笑みを落とし、「では、雨になりそうですから」と私の肩を抱いてマンションへと向き直った。
まだ傍らにはアキくんがいる。
私の心臓は不穏な音を立てていた。
「ア、アキくん。ばいばい」
手のひらを見せて揺らした。
「……うん」
そうつぶやいたアキくんはポケットに手を入れたまま微動だにしない。
少し伸びた彼の前髪が目にかかっている。
隙間から覗く瞳は、空と同じように濁っていた。