身ごもり一夜、最後のキス~エリート外科医の切なくも激しい執愛~
彼は横向きになり体を私へ向けている。
「星来にお願いがあるんだ」
「うん。いいよ」
「思い出をくれないか。俺も星来も忘れられない、強烈な」
静かなトーンでアキくんが言う。
理解しようとして数秒考えたが飲み込めず、デジタル時計の秒数が五六回動いただけだった。
不安になって彼の白いワイシャツの袖のボタンに触れる。
「アキくんのこと忘れたりしないよ? 」
「形に残るようにしたい」
触れていた彼の手が折り返し、私の指に絡まった。
「形?」
「そう。俺の形。星来が忘れてもずっと残るように刻み付けておきたいんだ」
私をさらに引き寄せたアキくんからは、男性もののワックスや雨、そして病院の匂いがする。
いつもより距離が近い。
彼の反対の手は、スカートへ忍び込んで膝の裏を持ち上げた。
「アキくんっ」
「男と女みたいだろ? こんなふうになったことがない俺たちには強烈な思い出になると思うよ」
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